

海辺の街の「暮らし」を支えてきた店。
昭和34年創業。海津金物店と鵠沼海岸の歴史
「鵠沼海岸駅から商店街を歩いていくと、昔ながらの金物屋がある。建築金物から刃物、工具、掃除用品、ペンキ、合鍵まで。いわば『暮らしの困りごと』を引き受ける店だ。この店が創業した昭和34年、鵠沼海岸はどんな町だったのか?

まだ舗装がされていない頃の商店街の様子
「観光地」だった鵠沼海岸
明治期の鵠沼は、現在とはかなり違う場所でした。1886年には鵠沼海水浴場が開場し、1889年には別荘地開発が 始まり、1892年には旅館「東屋」が創業。江ノ電の開通なども重なって、海辺の保養・観光地として発展していきます。商店街の起源も、こうした町の成長と切り離せません。当初は農家や漁師が別荘や旅館へ魚や野菜を届ける「御用聞き」が商売の始まりとなり、やがて海水浴客や旅館の宿泊客を相手にした店が道沿いに生まれていきました。


昔からずっと作り続けている木台。

昭和34年、海津金物店が生まれた時代から今
1959年、昭和34年。戦後復興が進み、鵠沼海岸では海水浴・観光だけでなく、住宅地としての日常生活が大きくなっていた時代です。金物店という業種は、この町の変化に非常に合っていたのかと察しました。海水浴客のための商売ではなく、「この町に住む人の家を維持するための店」だからです。現在も海津金物店は、建築金物、工具、刃物、清掃用品、ペンキ、物干竿、合鍵など、生活と住まいに関わる幅広い商品を扱っていますが、時代の流れとともに、このような商品を買い求めるために行くのは、大型ホームセンター。それでも、海津さんのような金物店が今も残っているのは、工具やネジの買い足しやお店の持つストーリーや佇まいを大切にしたいお客さんがいるからではないでしょうか。ネジ1本から買えるのは、大型店舗にはないポテンシャルと捉えることができます。
70年近くで変わったこと。変わらないこと。
変わったことは、観光地や別荘地など訪れる街から、住む街として発展してきたこと。海津さんは子供の頃、10円硬貨を握り締め、近くにあった鵠沼海岸のプール(現在、ハググライドパーク)に通い詰め、観光客のたくさんいる中、毎日泳いでいたのが楽しかったと話します。そんな時代を過ごしてきた海津さんが感じる昔から変わらないことは、商店街の人情だったり、観光客も地元の人もフランクに付き合える雰囲気だと話してくれました。
「老舗だから価値がある」ということではなく、70年近く地域の人の“ちょっと困った”に応えてきたから、今もお店があるという、あたりまえだけど、商いとして大切なことを海津さんのお店に立ち寄って感じました。
笑顔でインタビューに応えていただきました